ハースストーンの配信とメディア戦術

2016年4月5日火曜日

HearthStone

t f B! P L
ひとことで言うと、ハースストーンの配信にはメディア戦術が欠けているのでは?
という話をします。

色んな方がハースストーンの配信をするのは何故でしょうか。
ゲーマーとして名前を売りたいから?
Donateを得たいから?
普及のため?
視聴者とのコミュニケーションが楽しい?

目的は様々なれど、やることには大差ないはずです。
「Twitchやニコ生で、顔出し/音声でプレイの様子を動画配信する」
配信画面を工夫したりする等はあれど、大体このはずです。

ハースストーンを遊ぶものとして、またe-Sports観戦として、私も配信を見ます。
配信を見ていると、上に書いたような「目的」を、果たして十分に達成出来ているのか疑問に思うシーンが多々あるのです。

幾つか例を挙げます。




■言葉遣い
ある配信者は、一人称として「俺」という言葉を使います。
自分のことを俺と称する配信者は、視聴者にはどう映るでしょうか。
よく言えばフランク、悪く言えば幼稚な印象を受けませんか。

たとえばプロスポーツ選手がインタビューを受ける際、仲の良いインタビュアー相手なら自分のことを俺と称することはあるでしょうが、オフィシャルな場だったら間違いなく私と称しているはずです。それが(好印象は与えないまでも)悪い印象を与えることはない一人称だ、ということを分かっているからです。

一人称以外でも、視聴者に対して、まるで自分の友人かのように喋りかける配信者は多いです。実際、視聴者の中には友人知人もいるのでしょうが、そうでない視聴者からすると「なんだこいつ、やたら馴れ馴れしいな」と思われて当然だと思います。

そのノリがウケる秘訣だとか、ハースストーンプレイヤー間では当たり前だとか言うのであれば、何も言いません。ですが、ハースストーンを広く普及させたい……という気持ちを持った人の場合、逆効果じゃないでしょうか?


■見た目
よく「人を見た目で判断してはいけない」と言います。
ただしこれは判断する側の考え方であって、判断される側はそうではありません。身体的特徴などの持って生まれた要素は仕方ないとしても、それ以外で出来ることは、出来るだけ手を尽くすべきだと私は思います。髪型、服装、自分の背後に映る部屋の様子。どれもなんとか出来ることばかりです。

また、もし図や文字を提示することがあるならば、それらも気をつけたいところです。上等にする必要はありません、ただ丁寧に作ればいいんです。デザインのプロじゃないんですから。


■振る舞い
前述の言葉遣い以外の、立ち居振る舞い。配信中に食事するとかありえないですよね。
カーソルを無意味にウロウロカチカチするのも、見た目に宜しくないだけでなく、落ち着きが無い性格なのかな、と思われかねません。
それもまた「これが味なんだよ」「こうすると視聴者が喜ぶ」というなら止めませんが、ちょっと脇が甘いと思います。


■配信以外のメディア
Twitterアカウントを持って、配信の告知をしたり、配信時以外の交流を行っている配信者は多い(というかほとんど?)んじゃないでしょうか。有効に活用していて結構だと思います。

しかし、Twitterで「○○なプレイをされた。クソ」「△△してくるやつは初心者」などとつぶやくのは、たとえ独り言であったとしても、褒められたことじゃありません。鍵無しでツイートした時点で、そのツイートは誰もが見られる状態で、配信者自身を表現するものの1つになるのです。

配信時は丁寧な口調や解説で好印象なのに、Twitterでは目も当てられない、とか。配信やTwitterはいいけど、個人サイトがちょっと、とか。逆にTwitterではいいけど配信がちょっと、って方もいます。

これまた「そのギャップが面白い」「メインはあくまで配信、その他メディアは誰も見てない」ってことなら、もういいです。勝手にやってください。





……という感じで、冒頭に記したように、メディア戦術も何もない状態だよね今のハースストーン配信は、ということなんです。

専門的な言葉を使うと、「コンタクトポイント(原典ではタッチポイントという用語でしたかね)のマネジメントが出来ていない」とも言えそうです。コンタクトポイントとは、ユーザーが製品やブランドに触れる際のあらゆる接点のことで、ある目的のために一貫したマネジメントを行うことで、最大限の成果を得ようという考えです。

コンタクトポイント:ブランド価値を高めるWebサイトという顧客接点

たとえば「ハースストーン=楽しい」という訴求を行いたい場合、ゲームは楽しそうだけど配信が不愉快だ、なんて事態は問題あるわけです。一人で遊ぶ分にはいいけどオフ会は微妙そうだな、とかもそうですね。それらの、ユーザーとハースストーンが触れるあらゆるコンタクトポイントを最適化することが、もっとも「ハースストーンって楽しい!」と伝えるのに効果的ということです。



それが、出来ているようには見えないわけです。
何故こうなってしまったか。

一般にプロスポーツでは、選手が公でコメントしたり意見を述べたりするのは、大体は一定のメディア戦術を授けられた後だと思います。簡単なところだと「一人称は○○」「△△には触れない」みたいな。だから、簡単に揚げ足を取られないし、誰にでも安心して見てもらえるわけです。

それ以前に、表に出てくるまでに長い年月があり、その間に周囲の大人や先達に指導されたり、彼らを目にしているうちに、「こういう時は、こうすべきだ」という一定の価値観が育まれている可能性も高いでしょう。

ところが現在のゲーム実況配信においては、個人が何の戦術も指導もないまま、ポーンと表に出ることが出来る。視聴者を増やすには他の人と違う、何らかの要素が必要なものの、その要素は世間一般で評価されるものとは限らない。結果、こうなってしまった、と。



当然、配信者の中には、全方位においてスキが無い人もいるとは思います。また、一定の戦術の上で、あえて何かやっている人もいるでしょう。以前は微妙だったけど最近はいいよね、って人も。なので、全員がとは言いません。しかしごく一部の人だけであっても、目に余るような振る舞いをされていると、それがハースストーン全体に対する評価に成りかねません。平たく言うと、真面目に熱心にやっている人の足を引っ張っている人がいる、ということです。

配信は個人の勝手であり、視聴も個人の勝手です。
ただ、そこにパブリックな要素がある以上、メディア戦術について手は打つべきだと思うんです。そうすることで、より目的に近づけるんじゃないでしょうか。そしてそれが一番大切なことじゃないかと思うんです。



とは言え、ハースストーンの日本語公式サイトやアカウント自体が幼稚な雰囲気を出している以上、私が述べたようなことは杞憂であり、今の姿がベターなのかもしれませんね。そうだとすると、私の価値観や考え方がズレているだけかもしれないわけです。

ハースストーンは、元ネタであるMMORPG「World of Warcraft」の世界で、酒場で酔っ払いたちが遊ぶゲームをイメージしていると聞いたことが有ります。そのイメージからすると、今の配信の状況は、もしかしたらピッタリなのかもしれないですね。普段お酒を飲まない私からするとあまり想像出来ませんが……

また、日本におけるハースストーンの盛り上がりを、オフィシャルではなくユーザーが作ってきたという背景も影響しているかもしれません。オフィシャルも、あえて水を指すようなことはしないため、こういう雰囲気が保たれていると。しかしこれは、e-Sportsとしての”世間における”地位を確立し向上しようという動きにとっては、マイナスに働くような気がしてなりません。「しょせんゲーム」「子どもの遊び」と取られかねないんじゃないかということです。



もう何年かして、今と変わらぬ状況が続いているのか、打って変わっているのか、私にも分かりません。1つ言えるのは、運営者にとってハースストーンはビジネスの1つに過ぎませんが、ユーザーにとっては”数ある遊びの中の1つ”とは簡単に言えない・割り切れないようになっているかもしれない、ということです。

今はまだ、若者中心の遊びかもしれませんが、しばらくするとMtGなどをしのいで「カードゲームといえばハースストーン」みたいな存在になっているかもしれません。私はそれを願っています。


このブログを検索

過去の記事

QooQ